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世界的に50歳未満で発症する癌が増加 乳がんが最も増加 そのリスク因子と予防 40%が予防できる
1990年代以降、世界の多くの地域において50歳未満で発症する早期発症がんが増加して世界的な問題となっています。
シンガポール国立大学のBenjamin Koh氏らによる米国の住民ベースのコホート研究の結果、2010年から2019年にかけて早期発症がんの罹患率は有意に増加し、とくに消化器がんは最も急速に増加していたことが明らかになっています。
主な結果は以下のとおり。
・早期発症がん患者56万2,145例うち57.7%が40~49歳で、62.5%が女性であった。
・2010年から2019年にかけて、50歳未満の早期発症がんの罹患率は増加していたが50歳以上のがん罹患率は減少
・早期発症がんは女性では増加していたが、男性では減少
・2019年の早期発症がんの罹患数が最も多かったのは乳がん(1万2,649例)であった。
これらの結果より、研究グループは「このコホート研究において、早期発症がんの罹患率は2010年から2019年にかけて増加していた。2019年の罹患数は乳がんが最も多かったが、消化器がんは最も急速に増加していた。
*Koh B, et al. JAMA Netw Open. 2023;6:e2328171.
10万人以上の住民を対象とするフランスのコホート研究
研究グループは、100%果物ジュースを含む砂糖入り飲料および人工甘味料入り飲料と、がんのリスクとの関連の評価を目的とする住民ベースの前向きコホート研究を行った(フランス保健省などの助成による)。
飲料のタイプ別の割合は、砂糖入り飲料(100%果物ジュースを除く)が36%、100%果物ジュースが45%で、人工甘味料入り飲料は19%だった。追跡期間中央値5.1年(49万3,884人年)の間に、2,193例が初発のがんを発症した。内訳は、乳がんが693例(閉経前283例、閉経後410例)、前立腺がんが291例、大腸がんは166例で、診断時の平均年齢は58.5±12.0歳だった。砂糖入り飲料の消費は、全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.18、95%信頼区間[CI]:1.10~1.27、p<0.001)および乳がん(1.22、1.07~1.39、p=0.004)のリスクと有意な関連が認められた。乳がんは、閉経前(p=0.02)が閉経後(p=0.07)よりも関連性が明確であったが、砂糖入り飲料の消費量中央値は、閉経期(88.2mL/日)のほうが閉経前(43.2mL/日)に比べ多かった。100%果物ジュースの消費は全がん(消費量100mL/日増加の部分分布HR:1.12、95%CI:1.03~1.23、p=0.007)のリスクと有意な関連を示した。
著者は、「これらの結果は、他の大規模な前向き研究で再現性を検証する必要がある」とし、「欧米諸国で広く消費されている砂糖入り飲料は、がん予防における修正可能なリスク因子である可能性が示唆される」と指摘している。
*Chazelas E, et al. BMJ. 2019;366:l2408.
● 超加工食品の摂取量、全がんリスク上昇と関連
「超加工食品」は色、風味、食感を調整したり、保存期間を延ばすために様々な食品添加物が使用されている
食事における超加工食品(ultra-processed food)の割合が10%上昇すると、全がんリスクおよび乳がんリスクが10%以上有意に上昇することを、フランス・パリ第13大学のThibault Fiolet氏らが、前向き大規模コホート研究の結果で報告した。超加工食品は、低栄養価、添加物、食品と接触するパッケージの材質、製造・加工・貯蔵で生成される化合物によって特徴付けられる。がんリスクとの関連についての疫学データは不足しているが、これまでの研究では、一般に超加工食品と認識される特徴要素の中に発がん作用がある可能性が示唆されていた。超加工食品の割合が10%増で、全がんリスクが12%、乳がんリスクは11%上昇
超加工食品の摂取量は、全がんリスクの上昇と関連していた(2,228例、超加工食品の割合の10%増加に対するハザード比[HR]:1.12[95%信頼区間[CI]:1.06~1.18]、傾向のp<0.001)。また、乳がんリスクの上昇との関連も認められた(739例、HR:1.11[95%CI:1.02~1.22]、傾向のp=0.02)。
超加工食品摂取割合の増加はがんリスクを高める可能性が大!
*Fiolet T, et al. BMJ. 2018;360:k322.
冠動脈心疾患の疾病負担の6%(最低値は東南アジア地域の3.2%、最高値は地中海東部地域の7.8%)が運動不足に起因すると推定された。運動不足の2型糖尿病への寄与は7%(範囲:3.9~9.6%)、乳がんへの寄与は10%(5.6~14.1%)、結腸がんへの寄与は10%(5.7~13.8%)と推察された。2008年に世界で発生した若年死の9%(5.1~12.5%)、すなわち5,700万件の若年死のうち530万件が運動不足に起因していた。著者は、「世界的に、運動不足の健康への影響は大きい。不健康な行動の低減や除去により、健康は実質的に改善される可能性がある」と結論づけ、「運動不足の健康リスクは、確立されたリスク因子である喫煙や肥満と同等なことがわかった。1日15~30分の早歩きなどの適度な運動が健康効果をもたらすことが知られており、運動不足の低減に向けたあらゆる尽力を支援すべきである」と指摘している。*Lee IM et al. Effect of physical inactivity on major non-communicable diseases worldwide: an analysis of burden of disease and life expectancy. Lancet. 2012 Jul 21;380(9838):219-29. Epub 2012 Jul 18.
● 7時間以上の座位で乳がんリスク36%増
日本人を対象とした大規模研究により、座っている時間が1日7時間以上だと乳がんの罹患リスクが36%上昇し、余暇の運動量・頻度や歩行時間が多くてもリスクは依然として高かったことを、京都府立医科大学の富田 仁美氏らの研究グループが明らかにした。
日本人の乳がんの罹患原因のうち、約5%は運動不足に起因していると言われている)。
研究には、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)のデータを用いた。解析対象は35〜69歳の女性3万6,023人(平均年齢54.5歳)で、追跡期間中央値は9.4年であった。
主な結果は以下のとおり。
・3万6,023人のうち、1日当たりの座位時間が7時間未満だったのは21.2%、7~10時間未満は26.3%、10~13時間未満は25.3%、13時間以上は27.2%であった。
・追跡期間中に554例(1.5%)が乳がんに罹患した。
・7時間未満の集団と比較して、7時間以上の集団では乳がんの罹患リスクが有意に高かった(HR:1.36、95%CI:1.07~1.71、p=0.01)。
・座位時間が長くなるほどリスクが上がるわけではなく、7~10時間未満のHRは1.32(95%CI:1.01~1.72、p=0.043)、10~13時間未満は1.42(1.09~1.84、p=0.010)、13時間以上は1.34(1.02~1.75、p=0.035)であった。
・7時間以上の集団の乳がん罹患リスクは、余暇における1METs・時/日以上の運動(HR:1.58、95%CI:1.11~2.25、p=0.012)、週3回以上の運動(1.77、1.20~2.61、p=0.004)、1日1時間以上の歩行(1.42、1.10~1.83、p=0.007)を行っていても、7時間未満の集団よりも高かった。
これらの結果より、研究グループは「7時間/日以上座って過ごす生活習慣は、より高い乳がんリスクと関連し、余暇の身体活動や1日の歩行時間はリスクを抑制しなかった。この所見は、座っている時間が身体活動よりも影響力のある因子である可能性を示唆している。日本人女性の乳がんリスクを低下させるためには、座位時間の短縮が必要」とまとめた。
*Tomida S, et al. Cancer Sci. 2023 Dec 2. [Epub ahead of print]
● がん罹患の40%・死亡の44%が予防できる可能性
米国におけるがん罹患の約40%とがん死亡の44%が、修正可能なリスク因子に起因していることが新たな研究で明らかになった。とくに喫煙、過体重、飲酒が主要なリスク因子であり、肺がんをはじめとする多くのがんに大きな影響を与えているという。
米国がん協会(ジョージア州・アトランタ)のFarhad Islami氏らは、2019年(COVID-19流行の影響を避けるため、この年に設定)に米国でがんと診断された30歳以上の成人を対象に、30のがん種について全体および潜在的に修正可能なリスク因子に起因する割合と死亡数を推定した。
評価されたリスク因子には、喫煙(現在および過去)、受動喫煙、過体重、飲酒、赤肉および加工肉の摂取、果物や野菜の摂取不足、食物繊維およびカルシウムの摂取不足、運動不足、紫外線、そして7つの発がん性感染症が含まれた。
主な結果は以下のとおり。
・2019年における米国の30歳以上の成人における全がん罹患数(非メラノーマを除く)の40.0%(71万3,340/178万1,649例)、全がん死亡数の44.0%(26万2,120/59万5,737例)が評価されたリスク因子に起因すると推定された。
・全がんの罹患/死亡に関連するリスク因子の1位は喫煙(19.3%/28.5%)であり、2位は過体重(7.6%/7.3%)、3位は飲酒(5.4%/4.1%)であった。
・評価対象となった30種のがんのうち、19種類のがんは罹患数および死亡数の2分の1以上が検討された評価されたリスク因子に起因していた。
・リスク因子に起因するがんのうち、肺がんが罹患数(20万1,660例)および死亡数(12万2,740例)とも最多であり、罹患数は女性の乳がん(8万3,840例)、メラノーマ(8万2,710例)、大腸がん(7万8,440例)が続き、死亡数では大腸がん(2万5,800例)、肝がん(1万4,720例)、食道がん(1万3,600例)が続いた。
著者らは「米国における多数のがん罹患および死亡は、潜在的に修正可能なリスク因子に起因しており、予防策を幅広く公平に実施することにより、がんの負担を大幅に軽減できる可能性がある。喫煙対策としての課税強化、禁煙支援プログラムの拡充、そして健康的な体重維持の推進などが有効だろう。さらに適切な飲酒制限、バランスの取れた食事、定期的な運動もがん予防に有効だ」としている。
*Islami F, et al. CA Cancer J Clin. 2024 Jul 11. [Epub ahead of print]
カテゴリー:★ 院長ブログ・医療情報 ★ 更新日:2024年9月7日